服作りには欠かせない裁ちばさみ。
布を切ることはシンプルな作業ですが、はさみの切れ味によって効率や仕上がりの美しさにも影響してきます。
そんなはさみは洋裁道具の中でも重要なものですがその種類は数多くあります。
今回は裁ちばさみの日本ならではの歴史や職人たちが作り出す技に迫って行きます。
日本の裁ちばさみの歴史を紐解くと1800年台中頃までさかのぼります。
明治時代に日本でも洋服が主流になったことに伴い、欧米型のはさみも渡来してきました。
それまで和装文化だった日本には布を切るといえば直線的に切る包丁のような物裁包丁か細部を切るにぎり鋏だけしかありませんでした。
欧米型のはさみの渡来によって日本人の「布を切る」ことに対する認識は変わり、薄い生地から厚い生地まで曲線的に切れる欧米型のハサミは必要不可欠なものになっていきました。
しかし、刀に代表される切れ味の良い刃物に慣れ親しんだ日本人にとって、当時の欧米型ハサミは大きくて重く、切れ味等の品質は満足出来るものではありませんでした。
この頃刀鍛冶であった吉田弥十郎(銘:弥吉)が自らの刀鍛冶技術を生かし、欧米式のハサミに日本刀の持つ鋭さとはさみ全体の軽量化をはかり、独自のはさみを生み出しました。
これが現在のはさみの原型と言われています。
裁ちばさみは羅紗(ラシャ)切りばさみとも言います。
羅紗はポルトガル語のLAXAを音訳したもので、羅も紗も薄い絹織物のことを指します。
しかし2字を合わせた造語の羅紗という布は絹とは関係なく、「毛織物の一種で地を厚く、織目を細かく表面だけをけばだてた物」を指します。
前述の通り、洋服文化の浸透によって厚手の布地を切るために造られたラシャ切鋏ですが、薄い生地でも楽々と切ることが出来ます。
日本を代表するハサミメーカー「庄三郎」の創業者 三浦庄三郎は弥吉師のはさみ製造技術を引き継ぐ職人として、幼いころからはさみづくりの修行を重ね、技術を身に着けました。
庄三郎は生涯をはさみの研究に捧げ、日本のはさみの普及に大きく寄与しました。
現在庄三郎のはさみは庄三郎が育て上げた直系の職人達が品質に妥協することなく、一丁ずつ真心を持って作り続けています。
昔は、握る部分の形づくり、刃金を付ける、鍛える、削る、など全ての工程を人の手に頼っていました。
現在ではその大部分を機械化することができましたが、切れ味にかかわる大事な“優れた刃の擦りあわせ”(2つの刃が最適に擦れ合うように調整すること)は、人の手で一丁づづ細心の注意を払って行われています。
庄三郎のはさみは機械化による均一した品質と共に、伝統から培ってきた人の技術をもって仕上げられています。
日本の刀鍛冶技術をルーツにしている裁ちバサミは刃を上下にジョキジョキと動かさず、生地の目に沿わせて押すだけでも切れてしまう程です。
はさみ自体にしっかりと重みがあるので、持った時に手に馴染み、安定して布を切ることが出来ます。
厚いものから薄いものまで無理なく切れるのは日本の伝統技術の賜物といえます。
・鋼は錆びる可能性があるので使用後には手の脂などの汚れを落とすために布で拭き、手入れをする必要があります。
・はさみを落とすとネジが緩むなど切れ味に影響する為、取扱には注意しましょう。
・はさみの切れ味をより長く保つためには切る素材別に、はさみ用意し、使用することがおすすめです。
・裁ちはさみは刃が薄く出来ているため、紙を切ると刃こぼれを起こしてしまいます。また布よりも固い紙を切ると刃のかみ合わせが悪くなるため紙は切らないようにしましょう。
一般的なステンレスはさみに比べると高価な庄三郎のはさみですが、熟練した職人の技と伝統の結晶と言える一品だと言えます。
また切れ味が悪くなってしまっても、研ぎに出すことで半永久的に使うことが出来る点も特徴です。
手入れをすることで長く愛用できる、庄三郎のはさみ。
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